指導者のための指導者支援情報

危険のありかと予知

●気象・海況

天気の様子や海の状態は、水辺活動の快適で安全な実施に最も強く影響を及ぼします。せっかく来たのだからと言って、天気も悪く、海も荒れた状態で無理をするのは禁物です。大切なことは、それらの変化の徴候を少しでも早く察知し、安全を優先して計画を変更する勇気を持つことです。そのためには日頃から空や海に対する関心を持ち、観察する能力を育てることです。そのコツは、自然を見る時の大きな目と小さな目の両方を合わせ持つことです。

(1) 天候予測

各種の天気予報や気象情報を集めて、行動計画を立てる時の参考にします。ただしここでの予測は、大きな目でのとらえ方になります。それは今日・明日・何日後といった日数単位であることと、この地域といった広がりを持っているからです。しかし台風の発生や高気圧・低気圧・前線の存在などについては、これらの情報を頼りにすべきです。

それに対して「観天望気」と呼ばれる方法は、多分に経験的・感覚的ではありますが、その場所における時間単位での予測の上では効果の高いものです。その地域ならではの言い伝えがあったりしますが、科学的な裏付けのなされているものも多数あります。

(2) 海況判断

海は、一日の中でもその姿を大きく変化させます。しかしそれらの変化は、大きな目で見ると基本的には変わっていない部分と、日々刻々変化する部分とに大きく分けられます。基本的な海流、定期的に生ずる潮の満ち引き、地形的な特徴による流れや深さの変化などは、基本的にはいつも変わらぬ様相を呈しているはずです。しかしながら、先程までの流れが急に逆になったということもあれば、風向きの変化によって急に波が大きくなったということもあります。また河川の流入がある地域では、上流も含めた降雨の影響を受けて水質や水温に大きな変化を生じます。天候予測と同様に、海が呈する様々な特徴を情報として感知し、行動の内容や範囲を予め判断しておくことが大切です。

●危険な生物

海の中をのぞくと色とりどりのサンゴや魚に迎えられ、まるで竜宮城が歓迎してくれているようです。しかしそれらの中には、人の命を奪いかねないような危険な生物も一緒に生息しているのです。特に暖かい海流の影響を受けている地域ほど、それら危険な生物の種類も多くなります。危険な生物に対しては一方的に警戒するだけでなく、正しい知識を持って観察し、落ち着いて対処すればそれらの被害を防ぐことができます。そしてできれば万が一被害にあった時のために、正しい処置方法まで理解しておきたいものです。

一番大切なこととして、これらの危険な生物たちは自分自身の身を守るためや餌を捕獲するために毒を持っていたりすることを理解することです。したがってそれらの生物を脅かしたり危害を加えたりしない限り、(向こう)相手の方から私たちをねらって襲ってくるようなことはまずありません。また、毒のある魚はふつうの魚と違って手を出しても逃げようとしません。被害の多くは、知らないで近付いたり、気付かないで相手のテリトリーに入り込んだりすることによって受けているものです。魚たちの住み家にお邪魔させてもらっていることを忘れないようにしましょう。そのためにも危険な生物のことをよく理解し、注意して観察したいものです。間違ってもこちらから近付いたり、追いかけてつかまえようとしたり決してしないことです。こちらの被害を防止する上でも、手袋やウェットスーツまたTシャツなどの衣服、そして足下のシューズなどが有効に働きます。

ここでは、それらの内でも特に危険度の高い代表的なものについてだけ紹介しますが、これらの他にも注意が必要なものがたくさんあります。また地域によって特徴もあったりしますから、インストラクターや地元の人に詳しく聞いて知識を付けるようにしましょう。

(1)クラゲの仲間

ミズクラゲなど安心なクラゲもいますが、アンドンクラゲ、カツオノエボシ、ハブクラゲなど、触手に触れると強い神経毒のために命に影響を及ぼすこともあります。向こうから触手を伸ばしてくるようなことはありませんが、被害にあった場合には決して慌てずに静かに水からあがり、触手を取り除くとともに患部を冷やして医師の処置を受けます。ハブクラゲの被害にあった際には、まず食酢をたっぷりとかけてから、触手を取り除くと良いでしょう。また、ハブクラゲ以外は、食酢を使用すると逆効果になることがあるといわれています。

(2)イモガイの仲間

アジロイモ

里芋に似た貝殻の形からイモガイと呼ばれ、地域によっては食用にしているように無毒のものも多いですが、アンボイナ、タガヤサンミナシ、ハブ貝などと呼ばれる種類のイモガイは、人命にかかわる程の猛毒を有した鋭い針を持っており、貝の大きさの5倍程の所まで攻撃能力を持っています。貝殻には入り組んだ美しい模様が付いていて区別できますが、海の中ではなかなか模様が判別できません。したがってこの形をした貝をつかまえようと手を出すことは大変危険です。また岩やサンゴの上に乗っていることも多く、知らないで踏みつけたりしないよう、手や足を付く時には十分に安全を確認してから行動して下さい。

(3)タコの仲間

ヒョウモンダコの仲間(オオマルモンダコ)

ヒョウモンダコという小型のタコは、興奮すると白地の身体に青色の蛍光色がヒョウ柄のようになって美しく変身する一見かわいいタコです。でも命に関わる程の猛毒をもった歯でかみついてきます。知らないと手にとって観察したくなるような生き物ですが、決してつかまえようとしてはいけません。その他によく見られるタコには毒はありませんが、安易につかまえようとすると腕全体に吸い付かれるだけでなく、時には鋭いくちばしで噛み付いてきます。

(4)ウミヘビの仲間

ウミヘビの一種

南の海では、決して珍しくない生き物です。鮮やかな模様を持ち、すぐに見つけることができるでしょう。このウミヘビは、一番の猛毒を持っていることで知られています。でも好奇心は強いようですが案外おとなしく、よほど追い詰めたりして危害を加えない限り、向こうの方から襲ってくることはないようです。海の中で出会っても、大体がウミヘビの方から離れていくことが多いです。またウミヘビの口は大変小さいことから、万が一ウェットスーツなどの上から噛まれても毒牙が肌に届きません。このようなことからも、海に入る時には適切な衣服を身に付けて入りたいものです。

(5)サンゴ・イソギンチャクの仲間

サンゴやイソギンチャクも、基本的にはクラゲと同じように細かな細胞から毒針を出して小魚をつかまえています。種類によって毒の程度は様々ですが、サンゴの中ではファイアーコーラル(火焔サンゴ)と呼ばれるものが最も強く、中には発熱する人もいます。他の種類のサンゴやイソギンチャクでも、触れると腫れたりかゆみを覚える人がいますが、決して擦ったりせずに酢やアルコールをかけて対処します。

(6)ウニの仲間

ガンガゼ

ほとんどのウニは、トゲはあっても毒はありません。ただしガンガゼの仲間はトゲは鋭く、ささるとすぐに折れて身体の中に残ってしまいます。刺されたら50℃位の熱いお湯に付けて痛みが引くのを待ちます。それでも痛みがひかなかったりトゲが深い場合には、医師の処置を受けます。場所によっては、いたる所にウニがいたりします。水底をよく観察して被害を避けるようにしましょう。

(7)トゲ(毒)を持つ魚

エイ、オコゼ、ゴンズイ、カサゴなどの仲間には、背ビレや胸ビレそして尻ビレなどに毒のあるトゲを持っている魚がいます。特にミノカサゴなどは、きれいな姿をしてユラユラと泳いでいますから、決して手を出さずにゆっくりと観察しましょう。

エイは、砂地に隠れていることが多く、特に浅い所をザブザブと歩いている時などに被害にあいます。中でもオニダルマオコゼは、英語でストーンフィッシュと言われるようにまったく岩との区別が付かないほど見つけにくい魚で、背中に強い毒のトゲを持っています。これらの魚は、決して向こうから襲ってくるようなことはありません。良く注意して水中を観察し、「あっ、見つけたぞ!」と、こちらから余裕を持って観察したいものです。

万が一これらの魚に刺された場合には、傷口をきれいに洗い、40~50℃位の熱いお湯に痛みがやわらぐまで浸けておきます。トゲや針が深く刺さっている場合には、速やかに医師の処置を受けるようにしましょう。

ゴンズイの群れミノカサゴ
アカエイ

<海洋危険生物による被害と応急処置>

生物名 毒器官と被害の様子 予防と対策
カツオノエボシ

青い気胞体で水面に浮き、その下面には数本の長い触手が垂れ下がっています。刺される(触手に触れる)と激しい痛みがあります。

風が強い日などに海岸近くに打ち寄せられることがあります。エントリーする前によく確認しましょう。

付着した触手は海水で洗い流し、痛い場合は氷や冷水で冷やします。

アンドンクラゲ

触手にある無数の細胞で刺されます。刺されると、数分以内にミミズ腫れができます。

お盆の頃から多数見かけるクラゲですが、体が半透明なので気づかずに刺されてしまうことが多いクラゲです。

付着した触手は、海水で洗い流し、痛い場合は氷や冷水で冷やします。酢を使うと細胞が発射し、被害が広がる恐れがあります。

ハブクラゲ

触手にある無数の細胞で刺されます。刺されると、数分以内にミミズ腫れができます。広範囲に刺されると、心肺停止に陥ることがあります。

体が半透明なので、その存在に気づかず刺されます。

すぐに海から上がり、こすったりせず、酢をたっぷりかけ、付着した触手をそっとはがします。痛い場合は氷や冷水で冷やします。
※酢をかける前にこすったりすると、刺激で未発射の刺胞が発射してしまい被害が大きくなってしまいます。

ガヤの仲間

羽根のような形をしておりシダ植物のように見えますが、クラゲの仲間です。刺されると痛みが走ります。

一見植物のように見え、知らずに触って刺されることがあります。

 刺された場合は冷やすと痛みが和らぎます。
イラモ

海藻のように見えますが、クラゲの仲間です。刺されると激痛が走り、やがて刺されたところが腫れてきます。

海藻のように見えるので、気づかず手や足をついて刺されることがあります。また、フィンなどで蹴った刺激で遊離した刺胞に刺されることもあります。

付着した触手は海水で洗い流し、痛い場合は氷や冷水で冷やします。

アンボイナ

イモガイの仲間は体の中に毒銛(歯舌歯)をもっています。刺されても痛みはほとんどありませんが、すぐに体がしびれ、おぼれる危険性があります。

捕まえると毒銛で刺されることがあります。きれいな貝ですが、見ても絶対にさわらないようにしましょう。

針が残っていたら抜き取り、安静を保ちながらすぐに医療機関へ運んで下さい。

ヒョウモンダコ

体長約12cmの小型のあざやかなタコです。青い小斑紋は変色するのできれいに見えます。

小型の美しいタコで、手にとって触ったりすると咬まれてしまいます。咬まれたら安静を保ちながら医療機関へ運んで下さい。ヒョウモンダコの毒はフグと同じ成分なので飲み込むと危険です。

ウミヘビの仲間

強い神経毒をもつので、かまれると神経がマヒして動くことができなくなります。

ウミヘビの方から近寄ってくる場合もありますが、絶対にいたずらしないことです。

咬まれたらすぐに海から上がり、安静を保ちながら医療機関へ運んで下さい。救急車を待つ間などに毒を吸い出して下さい。

アナサンゴモドキの仲間

樹枝状、板状、被覆状など種により形が異なります。刺されると水ぶくれなどヤケドに似た症状が出るので火炎サンゴなどと呼ばれています。

昼間でも触手を伸ばしており、サンゴに近寄っただけでも症状が出る人もいます。

海水で付着物を洗い流した後、水道水で患部をきれいにし、痛い時は氷や冷水で冷やします。

ウンバチイソギンチャク

猛毒のイソギンチャクです。岩や死んだサンゴ、礫(れき)等に足盤で付着しています。体表面刺胞がたくさんつまった刺胞球があり、刺されると激痛がはしります。潮干狩りやスノーケリング中などに被害が発生しています。

海藻のように見えるので、気づかず手や足をついて刺されることがあります。手や足をつく時はよく注意しましょう。

付着した刺胞球は海水で洗い流し、痛い場合は氷や冷水で冷やします。急性腎不全などの内臓疾患をともなう場合もあるので、刺された場合は必ず医療機関でみてもらいましょう。

ハタゴイソギンチャク

カクレクマノミが共生しているイソギンチャクです。イソギンチャクの仲間は触手に毒のある刺胞を多数持っています。

毒があると知らずに触って刺されることがあります。イソギンチャク類には毒があるので触らないようにしましょう。

付着した触手は海水で洗い流し、痛い場合は氷や冷水で冷やします。

ハナブサイソギンチャク

砂地に生息するイソギンチャクです。もみ殻のような頂球に多数の刺胞が詰まっています。刺激を与えると砂の中に引っ込んでしまいます。

海藻のように見えるため、知らずに触って刺されることがあります。

付着した頂球は海水で洗い流し、痛い場合は氷や冷水で冷やして下さい。

オニヒトデ

するどく毒のあるトゲのついた腕を10~17本もっています。刺されると激痛が走ります。

昼間はテーブルサンゴなどの下に隠れていることもあるので、手を入れる場合は、よく注意して下さい。

目に見える大きなトゲは取り除き40~45℃程度のお湯(手を入れていられる範囲でなるべく高い温度が良い)につけると痛みが和らぎます。トゲはおれやすく、折れたトゲが体内に残っている場合もあるので、医療機関でみてもらいましょう。

ガンガゼ

長くするどいトゲをもつ黒いウニです。トゲは折れやすく、刺されると激しい痛みがあります。

岩などの下にいることもあるので、手を入れる場合は、よく注意して下さい。目に見える多きなトゲは取り除き、40~45℃程度のお湯(手を入れていられる範囲でなるべく高い温度が良い)につけると痛みが和らぎます。トゲはおれやすく、折れたトゲが体内に残っている場合もあるので、医療機関でみてもらいましょう。

ラッパウニ

体表一面に毒をもつラッパ上の叉棘(さきょく)があります。

するどいトゲはありませんが、叉棘で刺されます。

付着した叉棘を取り除き、40~45℃程度のお湯(手を入れていられる範囲でなるべく高い温度が良い)につけると痛みが和らぎます。

エイの仲間

尾にある毒トゲで刺されたり、切られたりします。

砂中に潜っていることもあるので注意しましょう。

切られた場合は止血をしましょう。40~45℃程度のお湯(手を入れていられる範囲でなるべく高い温度が良い)につけると痛みが和らぎます。

ゴンズイ

背ビレと胸ビレに強烈な毒棘をもっています。幼魚の時代はゴンズイ球とよばれる群れをつくります。

ゴンズイ球に手などを突っ込んで刺されないようにしましょう。

目に見える大きなトゲは取り除き、40~45℃程度のお湯(手を入れていられる範囲でなるべく高い温度が良い)につけると痛みが和らぎます。

オコゼの仲間

背ビレに毒があります。オコゼの仲間は、色・形が石や岩に非常に似ています。浅瀬にいることもあり、踏みつけて刺される場合もあります。あまりの痛さに歩くこともできず、おぼれてしまう可能性もあります。

砂中にもぐっていることもあるので注意が必要です。フェルト底のマリンブーツはトゲを通さないといわれています。

目に見える大きなトゲは取り除き、40~45℃程度のお湯(手を入れていられる範囲でなるべく高い温度が良い)につけると痛みが和らぎます。

ミノカサゴの仲間

背ビレと腹ビレに毒があります。動きはゆっくりで、近づいてもあまり逃げません。驚かすと背ビレをたてて威嚇します。

動きがゆっくりしているため、触ろうとして刺されることもあります。

目に見える大きなトゲは取り除き、40~45℃程度のお湯(手を入れていられる範囲でなるべく高い温度が良い)につけると痛みが和らぎます。

ゾエア

エビやカニなどの幼生で海中を浮遊しています。するどいトゲ状の器官を持っています。水着と皮膚の間に入るとチクチクした痛みがあり、人によっては皮膚炎をおこすことがあります。

ゾエアは流れ藻と一緒に移動したり、ある場所に集まっていたりします。

チクチクしたら陸に上がり、早めに水着を脱いでシャワーでよく洗い流して下さい。

ウツボの仲間

毒はありませんが、鋭い歯でかまれます。どう猛な性質の種もいます。ドクウツボはシガテラ毒を持っているため食べると危険です。

岩穴などにひそんでいたりするので、不用意に近づいたり、手を入れたりしないようにしましょう。

止血をし、傷口が大きい場合は医療機関でみてもらいましょう。また、傷口から細菌などが入り二次感染を起こすこともあります。

ダツの仲間

長いくちばしをもち、表層を泳いでいます。毒はありませんが刺されて出血多量で死亡する事故が発生しています。

夜間、光に反応し猛スピードで突進してくることがあります。ナイト・スノーケリングの時は電灯を水平に持つとダツが向かってくるので、下向きにしましょう。また、人を照らすと照らされた方に向かっていくこともあるので、不用意に人を照らさないようにしましょう。

刺さったダツを抜いてしまうと出血するので、抜かないままですぐに医療機関へ運んで下さい。刺さったダツが暴れるので、頭より下を切り落として下さい。ダツが抜けてしまった場合はすぐに止血しましょう。

<資料提供:沖縄県衛生環境研究所 岩永節子研究員>

※財団法人社会スポーツセンター 日本スノーケリング協会
「スノーケリング指導者教本 <楽しく安全な活動としての普及を目指して>」より抜粋


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